連載 病める世相の心療内科

愛こそ閉塞を打ち破る力になる

2024年3月号 LIFE [病める世相の心療内科(86)]

前回、閉塞した環境は極めて有害となると述べた。ゆえに人は旅立ちたいという思いに駆られる。住み慣れた地を離れ、新たな地に向かうことは、別れの寂しさと、新しい出会いへの予感を生む。だから人は旅立ちの歌が好きで、名曲が多い。去って行くことの悲しみ以上に、新しい夢も醸し出してくれるのだ。逃げることのできない閉ざされた環境では、他者との関係の中で生じる歪みの解放は簡単ではない。ストレスを飲みこめば、怒りの感情が生じ、いつまでも内在させるとうつ状態を招くと、以前述べたことがある。うつ病の発生が昨今おびただしいのは世の中の閉塞状況によるといえよう。うつ状態となると暗く沈むだけと思われがちであるが、苛立たしく怒りっぽくもなる。時に敵意のような感情も引き出すことがある。人との交流を避け、それゆえ周囲も近寄りがたくなり、情緒的な結びつきが希薄となって、相互 ………

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