<インサイド> 田辺ファーマの「解体」が始動/ベインが「本丸」を売り飛ばし

2026年2月号 DEEP [ディープ・インサイド]

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田辺ファーマの原田明久代表取締役執行役員CEO

三菱ケミカルグループから切り離された田辺ファーマの解体が始まった。塩野義製薬は25年12月22日、田辺ファーマから筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬「エダラボン」に関する事業を25億ドル(約3900億円)で買収すると発表した。実はこのエダラボン、田辺ファーマの主力品。社員からは「これを取ったら、我が社に何が残るのか」との悲鳴が上がる。国内最古の製薬会社の命運は風前の灯火だ。

本業である化学に経営資源を集中するため、三菱ケミカルグループは25年2月、田辺三菱製薬(現・田辺ファーマ)を米投資ファンド・ベインキャピタルに5100億円で売却することを決めた。同年7月にはベインが買収し、12月には社名を田辺ファーマに改称した。

ベイン関係者は「短期的に売買しない」「しっかり腰を据えて付き合っていく」と説くが、最短5年での「出口戦略を描いているはず」と市場関係者はささやく。キャッシュを得るため、資産を切り売りするとの観測は飛び交っていたが、大方の予想はドラッグストアで買える一般用医薬品(OTC)事業だった。それがいきなり“本丸”を売り飛ばしたのだから業界関係者は度肝を抜かれた。

25年3月期のエダラボンの売り上げは国内で63億円、海外で1003億円。全社の売上高が4604億円であることを踏まえると、4分の1近くを稼ぎ出しているのだから社員がうろたえる理由もよく分かる。

ベイン買収後、田辺ファーマは四半期ごとの決算開示を取りやめたため、直近の状況は分からない。だが、複数の関係者によると糖尿病治療薬「マンジャロ」が抗肥満薬としてよく売れていることもあり、「業績はまあまあ」(同社幹部)だそうだ。

しかし、ベインによる“解体ショー”を目の当たりにした社員の転職熱は高まる一方。買収額の半分以上で売り払えたベインの高笑いだけが聞こえてくる。

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